再生医療とは、患者の細胞などを用いて、病気やけがで失われた臓器や組織を再生・回復させる医療です。再生医療の発展は、これまで治す事ができなかった病気やけがを克服できる医療として期待されています。
本院においては、活性化自己リンパ球療法に代表されるがん免疫細胞療法や骨髄幹細胞治療などを研究・臨床応用しています。
動物には免疫と呼ばれる働きが備わっており、体の中に侵入した細菌やウイルスを体の中から取り除く働きがあります。また、免疫細胞であるリンパ球は、体内にできたがん細胞を攻撃して死滅させます。
このような生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりする事で、がんの発症や進展を抑える治療をがん免疫細胞療法といいます。
微小がんの治癒効果、がんの再発予防、副作用がほとんどない事、QOL(quality of life:生活の質)の向上が期待できます。
大きな腫瘍は小さくできません。
1.活性化自己リンパ球療法(CAT療法)
(ア)アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)
(イ)ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)
2.樹状細胞療法(DC療法)
動物の血液(約10ml)からリンパ球を分離して、約1,000倍に活性化・増殖させ、点滴で体内に戻す療法。
骨折癒合不全、脊髄損傷(椎間板ヘルニア等)等の治療において、骨髄中の骨髄幹細胞(MSC)を培養・増殖させ、点滴や患部に投与して治療を行う。
1)あまり聞いた事がないなあ?人間の医療では、高度先進医療の認定を受け、東京大学、名古屋大学、千葉県立がんセンターなど多くの大学や多数の医療機関で治療が実施されています。その症例も、リンパ腫、肝細胞癌、卵巣腫瘍、悪性黒色腫、脳腫瘍など様々な腫瘍を対象としています。
2)入院は必要なの?また投薬の頻度は?動物の状態によりますが、半日~1日入院が必要です。
また、投与の間隔・回数は病状を見て相談して決めます。標準的な治療では、2週間に1回投与を4~6回、その後は月に1回投与を4~6回します。その後、検診にて治療の終了、中断、継続を検討します。
4)活性化自己リンパ球療法でがんは治りますか?活性化自己リンパ球療法では、進行がんや末期がんを完全に治すのは難しいと考えられています。しかし、がんの進行を抑えたり再発を防止する効果は期待できます。
5)他の治療法との併用は可能ですか?可能です。人間の医療において、化学療法や放射線療法などとの併用は、より高い効果が期待できると考えられています。
動物の体は細胞からできています。そして細胞は一定のルールで細胞分裂を繰り返しています。しかし、何らかの異常で突然変異が起こると、無秩序に細胞分裂を繰り返す細胞が生まれる事があります。
この細胞が「腫瘍」です。腫瘍には「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分けられ、「がん」は悪性腫瘍を指します。突然変異を起こさせる原因には、化学物質、放射線、ウイルス、遺伝的要因などがあると言われています。
がんの種類や進行状態、動物の体力、それぞれの治療法の特徴(長所、短所、限界)または費用などを考慮して検討します。また、併用することにより、治療効果を上げることも期待できます。
がんを治す最強の手段は、外科治療です。摘出によりがん細胞が残らなければ、完治する可能性が高いといえます。しかし、全身状態が悪いと麻酔をかけられないために手術はできません。また、血液の腫瘍には行う事ができません。
放射線でがん細胞にダメージを与える治療法です。一部のがん、場所により外科手術ができないがんなどで用いられます。
デメリットとすると、他の施設(大阪、三重)での治療になる事、頻回の麻酔が必要である事、副作用などが挙げられます。
全身に散らばったがんを叩くには化学療法(=抗がん剤)があります。リンパ腫や白血病のような血液系の腫瘍に効果があります。
デメリットとすると、増殖の早い細胞に対して働くために、骨髄や胃腸などに副作用が見られる時もあります。
細胞培養技術を用いる事によりがん細胞を攻撃する自分のリンパ球を増やしてがんの発育速度を抑えます。メリットとすると、ほとんど副作用がない事、QOL(quality of life:生活の質)の向上、微小がんの治癒効果、再発予防などが期待できます。
デメリットとすると、大きな腫瘍を小さくする事はできません。
サプリメントなどの健康補助食品、漢方薬、鍼灸、民間療法などがあります。臨床試験も行われず、正確なエビデンス(科学的根拠)が出ていないものも多く見受けられます。
過大な宣伝文句に惑わされず、冷静な判断をすることも必要です。